親知らず
親知らず
歯列のもっとも奥にある歯(8番目の歯)を親知らずといいます。正しくは、智歯または第三大臼歯といいます。
親知らずは最も遅く形成される永久歯で、ほとんどは10歳代後半から作られはじめ、だいたいは20歳代前半には歯根まで完成しています。しかし、退化傾向にある歯なので、人によっては親知らずがはじめから存在しない場合もあり、またその数も上下左右の4本がそろっているとはかぎりません。形も大きさもさまざまなバリエーションが多くみられます。
また、親知らずは歯列の一番奥で形成されるため、萌出するスペースが狭いため生える方向が悪いことが多く、骨の中に埋まっていたり、途中で萌出が止まってしまうことが多い歯です。
下顎では、斜めになったり、真横を向いていたりする歯(水平智歯)が多く、上顎では歯並びからはずれて外側を向いた歯が多いようです。そのために、 咀嚼に関与することが少ないといえます。
親知らずが引き起こすトラブル
むし歯
親知らずは最も奥まったところにあるために、たとえまっすぐに生えていても歯ブラシによる清掃が不十分になりやすく、むし歯になりやすい歯です。さらに、斜めに生えていたり真横を向いていたりすると手前の歯(第二大臼歯)との間に食べかすが残りやすく、手前の歯にもむし歯を作ります。場合によっては、親知らずだけでなく、咬むのに必要な手前の歯も抜かなければならなくなります。
智歯周囲炎
完全に生えずに中途半端な状態が長く続くために、歯ブラシによる清掃が不十分になりやすく、親知らず周囲に食べかすなどが停滞した結果、周囲の歯肉を刺激し続け、炎症を起こし、歯肉が痛んだり、腫れたりします。
一度、智歯周囲炎を起こすと数カ月から半年ぐらいの周期で再発を繰り返すことが多くなります。ひどい炎症の場合は顔が腫れて膿がたまったり、骨髄炎などの重篤な症状を引き起こすこともあります。長期間その状態を放置すると周囲の骨が吸収して、細菌の温床となることもあります。
歯列不正
とくに水平埋伏の状態や斜めに生える歯では、萌出にともなって前のの歯を押すために、前歯の歯並びを乱すことがあります。
顎関節症
上下の親知らずが正しく噛み合わないことが多く、噛み合わせに干渉している場合は顎の関節に負担をかけることがあります。
頬や歯肉の傷
斜めに生えた親知らずによって頬や歯肉を傷つけてしまうことがあります。
治療について
親知らずが引き起こすトラブルの多くはたとえ親知らずが完全に歯肉の中に埋まった状態でも起こります。したがって、生えていなくてもこれらの症状が起こる前に抜歯をしておいたほうがいいといえます。
また、症状が起こった後の炎症が強い時期は抜歯ができません。炎症が強い時に抜歯という侵襲を加えると、痛みや腫れがますます強くなり、しかもそれが長期にひかなくなるからです。場合によっては炎症が拡大して喉の方へ炎症が波及したり、口が開きにくくなったり(開口障害)、顔が腫れあがることもあります。そのような時は抗生物質や消炎鎮痛剤を投与して炎症を抑えてから抜歯します。
以上の理由から、親知らずの抜歯を希望される場合は痛みがない時に来院することをおすすめします。
また、親知らずは顎のもっとも奥にあるため、人によっては抜歯によって上顎では上顎洞へ穴があいたり、下顎では顎の中の神経を傷つけて口唇などの知覚障害が出ることがあります。
まずはレントゲン・CT等にて御自分の親知らずの状態を確認することをお勧めします。御相談ください。
当院では通常のレントゲンのほかにCTを備えておりますので、通常のレントゲンでは分かりにくい歯と上顎洞や顎の中の神経との3次元的な位置関係を術前に詳しく調べて抜歯することが可能です。
当院での抜歯の際は不安や緊張をとるために、通常の麻酔と笑気吸入鎮静法や静脈内鎮静法を併用します。麻酔が十分に効けば処置時の痛みはほとんどありません。 ※静脈鎮静法は現在、実施していません。